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ある画家の末路 - 2015.02.11 Wed

私は心酔する洋画家に弟子入りしている。しかし、絵の描き方は教えてもらえず、彼の下働きのようなことをしていた。

スランプに陥っている画家は最近では絵筆を握ることもなくなっていた。時折海外に出かけてはアンティークショップや骨董市で美術品を買い付けてくる。彼の審美眼は確かであり、安く仕入れた古い絵画はネットオークションで驚くような高い値段で競り落とされていった。

私は彼を尊敬していたし、教わりたいことが沢山あったのだが、それを口に出してはいけない重々しい空気が彼のまわりに漂っていた。画家は毎日虚ろな目でパソコンのモニターを見ながら美術品の値段を吊り上げる操作をしていた。

いつ頃からか、彼は扱う美術品のギャラリーと倉庫兼事務所を大阪の一等地に構えた。ビルの一階で、大通りに面したガラス張りのモダンなギャラリーは目立っている。
 
「あの…。ここの家賃ってすごく高そうですよね。絵画のオークションで今すごく儲かっているのだと思うのですが…。ちょっと心配で…。」

尊大で気難しいその画家に、普段は私ごときが意見をするような事はないのだが、その時は思い切って正直に疑問をぶつけてみた。そのビルは所有者がヤクザがらみだと言う噂がたっていたので私はとても心配だったのだ。

「フン。ハヲルチアは相変わらず頭悪いな。僕が今のビジネスでどれだけ稼いでいるのかわかっていないのか?家賃?そんなものもはや心配する必要はないのだ。今やこのビルのオーナーは僕なんだから。」
「ええっ!?ビル一棟丸ごと買われたんですか?!先生がいくら稼いでいるからって、こんな一等地のビルなんて買えるものなんですか?」
「バカッ。こんなバブルの遺産みたいなオンボロのビル、二束三文で買いたたいてやったわ!」

確かにそのビルは古かったが、外観は洒落ているし作りもしっかりしていた。何よりも申し分のない立地なのでテナントは常にいっぱい埋まっている。家賃収入をたんまり得られるビルを前のオーナーはいったいどんな理由で手放したというのだろうか。

「何をするにもカネだしね。アタマを使ってカネを稼がないとね。ハヲルチアも絵なんか描くの、やめてしまえばいい。」

画家が芸術を棄ててしまったことにとても悲しくなったのと同時に、私はいい知れぬ不安を感じた。

ある晩私は遅くまで画家のネットオークションの仕事を手伝っていた。モニターをのぞき込むと画家が出品したカイユボットの小作品は本物で、あれよ、あれよと言う間に価格が一千万円を越えた。画家はそれを満足げに見ながら呟いた。

「カネが好きだー。裏切らないからな。女はダメだ。」

それを聞いた私はなぜか涙が溢れ、おさえることが出来なくなったので、ビルの共用トイレにこもりしばらく声を出さずに泣いた。大好きだった先生はどこに行ってしまったんだろう。彼の身に何が起こったのだろう。

しばらくして化粧を直した後、戻ろうとすると事務所から聞き慣れない声がした。ドアの隙間からのぞくと黒ずくめの男たちが数人おり、床に血の水たまりが見えた。

「秘書の女がいただろう。」
「もう帰ったあとじゃないのか。」

私は気配を殺してトイレに戻った。個室に入り、洋式便座の上からよじ登り点検口から天井裏に入って隠れた。その直後男たちがトイレに入ってきた。

「ここにもいないな。」
「見ていないんだったらあの女は関係ないからな。よし、引き上げるぞ。」

男たちは去っていったが私は恐ろしくて一晩中そこで息を潜めていた。朝、誰が通報したのか警察がやってきた気配かしたので私は点検口から降り、事務所に行き現場捜査をしている刑事に事情を伝えた。

「詳しいことは署で聞くがね。あんた仏さんのコレ?」
刑事は小指を私の前にかざした。
「違います。弟子ですが秘書というか雑用係みたいなことをしていました。」 
「ふうん。弟子、ねぇ。ところでひどい殺され方だよ。至近距離でサイレンサー銃を使って何十発と打ち込まれたみたいなんだが…。」

刑事は画家の遺体にかけられた白い布をめくった。顔は蒼白だが美しいものだった。下半身周辺を集中して打たれたらしく、そこだけ血まみれであった。

女性関係が派手であった画家に怨恨のある人物による殺人だと刑事は邪推しているのだろうか。

心を閉ざしたまま亡くなった画家の悲惨な遺体を見た私の悲しみは、不思議とさっぱり消え去った。

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● COMMENT ●

これまた短編を読んでいるかのような心地よさです。

ちまちま子さん、コメントありがとうございます。
恐ろしい夢でした。でもとてもリアルでストーリーもあった夢なので記録しておくことにしました。


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プロフィール

ハヲルチア

Author:ハヲルチア
40歳で出産、老体にムチを打ちながら小さな息子と格闘中。現在派遣社員で翻訳の仕事をしています。主婦のつまらないひとりごと、奇妙な夢の記録、時々読書感想文、大好きなアートの話など―。

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