天使狂の唄 - 2014.10.14 Tue
真実かどうかはさておき、UFOや幽霊を見たことがある人の話はよく聞くが、芸術家の横尾忠則は天使が見えるのだそうだ。天使好きの私としては羨ましい話である。
新婚の頃のある日、家に一人でいると女性の二人組がやってきた。有名なキリスト教系の新興宗教の勧誘である。その宗教に対してはあまり良いイメージがないので一刻も早く帰っていただきたかったのだが、善良そうに見える彼女たちはマンションの表札のところを不思議そうに見て、私に言った。
「おたく様はなんという宗教に入っておられるのですか?」
何でそんなことを聞くのかと思えば、私は玄関周りに天使のオーナメントをたくさんぶら下げていたのだ。新興宗教の人間から見ても異様だったのだろうか。
二十代の頃ありとあらゆる天使モチーフの物を集めていた。古典絵画の絵葉書、置物、アクセサリー、天使について書かれた書物。手当たり次第になんでも集めていた。写真の稚拙な天使のデッサンはその頃に私が描いたもので、天使がちょこんと座るフレームに入れて今も何となく部屋の片隅に飾ってある。
きっかけはなんだったのか思い出せない。子供の頃に画集で見たラファエロの天使。高校生の頃流行っていてよく着ていたフィオルッチのトレードマーク。カラオケで歌い込むほど好きだったユーリズミックスの名曲“There must be an angel”。これらのどれかが私の天使好きのスイッチを入れたものと思われる。
私が天使モチーフの物を集めていることを知った家族や友人たちは旅行に行くたびにお土産に買ってきてくれたり、プレゼントしてくれたりするようになった。スペインのリヤドロの寝そべるあどけない顔の天使。イタリアの木彫りの珍しい物。異端の画家ウィリアム・ブレイクが画いた天使が表紙の英国製画集。ある友人は高級住宅街を通りかかったとき、とある邸宅の庭にあった天使像を私のために盗もうか考えた程だと笑っていた。極めつけは夫から貰った婚約指輪で、これは天使がダイヤを持っているという、自分の持ち物の中で最も大事な宝物だ。
熱意は30を過ぎたあたりから徐々に萎んで行き、新たなコレクションは増えていない。しかし今も気に入っているものは飾ったり身につけたりしている。私は怠け者で親の言うことも聞かず自分勝手に生きてきたが、40歳になって健康な赤ちゃんを産むことができ平凡ながらも幸せに暮らせるのは、これらの天使に守られていたからではないかと思うことが時々ある。もちろんそんなものは幻想で、実際は我慢強い夫や思いやりのある家族や友人に恵まれていたからだとは分かっているのだが。
あらためてユーリズミックスの美しい曲を聴いてみる。実際に天使が舞い降りて、美しい音楽を奏でているような曲だ。アン・レノックスのソウルフルな歌声と華麗なサウンドのハーモニーが素晴らしい。Must be talking to an angel, must be talking to an angel, must be talking to an angel….毎日私は、この世に降りてきた天使に実際に話しかけている。西洋画の天使とは違い、見事な一重まぶたの和顔だが、私にとってはかけがえのない天使なのだ。
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新婚の頃のある日、家に一人でいると女性の二人組がやってきた。有名なキリスト教系の新興宗教の勧誘である。その宗教に対してはあまり良いイメージがないので一刻も早く帰っていただきたかったのだが、善良そうに見える彼女たちはマンションの表札のところを不思議そうに見て、私に言った。
「おたく様はなんという宗教に入っておられるのですか?」
何でそんなことを聞くのかと思えば、私は玄関周りに天使のオーナメントをたくさんぶら下げていたのだ。新興宗教の人間から見ても異様だったのだろうか。
二十代の頃ありとあらゆる天使モチーフの物を集めていた。古典絵画の絵葉書、置物、アクセサリー、天使について書かれた書物。手当たり次第になんでも集めていた。写真の稚拙な天使のデッサンはその頃に私が描いたもので、天使がちょこんと座るフレームに入れて今も何となく部屋の片隅に飾ってある。
きっかけはなんだったのか思い出せない。子供の頃に画集で見たラファエロの天使。高校生の頃流行っていてよく着ていたフィオルッチのトレードマーク。カラオケで歌い込むほど好きだったユーリズミックスの名曲“There must be an angel”。これらのどれかが私の天使好きのスイッチを入れたものと思われる。
私が天使モチーフの物を集めていることを知った家族や友人たちは旅行に行くたびにお土産に買ってきてくれたり、プレゼントしてくれたりするようになった。スペインのリヤドロの寝そべるあどけない顔の天使。イタリアの木彫りの珍しい物。異端の画家ウィリアム・ブレイクが画いた天使が表紙の英国製画集。ある友人は高級住宅街を通りかかったとき、とある邸宅の庭にあった天使像を私のために盗もうか考えた程だと笑っていた。極めつけは夫から貰った婚約指輪で、これは天使がダイヤを持っているという、自分の持ち物の中で最も大事な宝物だ。
熱意は30を過ぎたあたりから徐々に萎んで行き、新たなコレクションは増えていない。しかし今も気に入っているものは飾ったり身につけたりしている。私は怠け者で親の言うことも聞かず自分勝手に生きてきたが、40歳になって健康な赤ちゃんを産むことができ平凡ながらも幸せに暮らせるのは、これらの天使に守られていたからではないかと思うことが時々ある。もちろんそんなものは幻想で、実際は我慢強い夫や思いやりのある家族や友人に恵まれていたからだとは分かっているのだが。
あらためてユーリズミックスの美しい曲を聴いてみる。実際に天使が舞い降りて、美しい音楽を奏でているような曲だ。アン・レノックスのソウルフルな歌声と華麗なサウンドのハーモニーが素晴らしい。Must be talking to an angel, must be talking to an angel, must be talking to an angel….毎日私は、この世に降りてきた天使に実際に話しかけている。西洋画の天使とは違い、見事な一重まぶたの和顔だが、私にとってはかけがえのない天使なのだ。
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