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ハイチョウガン - 2014.09.14 Sun

私は求職中のシングルマザーだ。経済的に困窮しているので、実家に身を寄せている。ハローワークに通っているが、いつも書類選考で落とされてしまう。

親友に商社に勤めるMというキャリアウーマンがおり、彼女の口添えで、ある企業の面接を受けられることになった。といっても彼女が勤めているような一流企業ではなく、その取引先の中小企業のメーカーである。

彼女が面接に立ち会って私を推薦してくれることになり、一緒にその企業に向かった。中小企業が多いことで知られる市にその会社はあり、工場の横に古びたグレーのオフィス棟があった。よく商談でこの企業を訪れるMは総務の横に来客専用のロッカーを借りていた。私物は持ち込めないことになっているのだそうだ。私もハンドバッグごと彼女のロッカーに一緒に入れて貰った。「携帯は?持って入ると怒られるからね。」彼女に聞かれて、今日はスマートフォンを持ってくるのを忘れたことに気が付いた。

面接官は50歳前後の男性が三人で、彼らはネクタイをしたシャツの上に作業着のジャンパーを着ていた。「彼女はウチの会社に派遣社員で来てくれていたんですが、とても優秀でして…」Mの言葉をさえぎり一人の男性が眉間に皺を寄せて言った。「Mさんの紹介ってもね~。おたくみたいな大手さんでハケン働いてたんでしょ?ウチみたいなところにこられてもね~。それに小さいお子さんもいるんでしょ?」

明らかに私を採用する事に難色を示しているようだった。左端に座っていた一人は大あくびをしていた。ハナから採用する気がないのだったら面接断れよ、と思ったが、親友のMが私のために頭を下げてまでこの面接の機会を作ってくれたのだと思うと何も言えなかった。

「なんか、ゴメンね。」形だけの面接が終わった後、Mはそう言って、私を屋上に誘った。ビルの外側に取ってつけたような、錆びついた金属製の非常階段を一緒に昇った。高所恐怖症である私はとても怖かった。工場がひしめき合う灰色の景色を見ながら彼女は「パリの下町みたいでしょ。私ここの商談で嫌な思いをしたらよくここに来るの。」どのへんがパリみたいなのか、行ったことのない私にはわからなかったが、よく出張でヨーロッパを訪れる彼女が言うのだから、そうなのかもしれない。屋上は味気ないビルには不似合いな優美な曲線のアイアンのフェンスで囲まれていた。そこだけがパリっぽいと言えなくもなかった。夕焼けが見え始めた頃、彼女は商談の続きがあるから、と屋上から降りて行った。私もそろそろ帰ろうと思っていたところ、総務の中年女性が不機嫌な顔をして私に近づいてきた。不採用を知らせに来たのかと思ったがそうではなかった。

「ハヲルチアさんにお家の方から電話があつたので、私用の電話は困るんですけどね。」と嫌そうな顔で、駄菓子の空き箱に書かれたメモを読み上げた。ああ、携帯が繋がらないのでこちらに掛けてきたのだなと思った。私の母からの伝言内容は、最近受けた健康診断で私がハイチョウガンに侵されていて、末期で助かる見込みがなくいつ死んでもおかしくないということがわかったので、すぐ戻ってこいとのことだった。「ハイチョウガン?肺と腸の癌のことですかね?」「さあ?そうじゃないんですか?」目の前に死を宣告された人間がいる割には冷淡な態度だった。むしろ、うちの会社で死んでくれるな、さっさと帰れ、ぐらいの態度に思えた。

絶望に打ちひしがれた私は、とにかく早く帰ってまだ幼い息子に会いたかった。自分が死ぬとわかった以上一秒たりとも時間を無駄にはできない。会社を出て駅に向かう途中、自分のバッグがないことに気が付いた。Mのロッカーにあずけたままだった。総務のあるフロアまで行き、Mがまだいないか名前を呼んで探したがとっくに自社に戻った後だった。しようがないので総務のさっきの女性に事情を説明したが、「もう勤務時間を過ぎているのでロッカーは開けられない」と言われた。せめて電話を貸してもらえないか、電車代を貸してもらえないか、と懇願しようとしたが総務の女性はますます不機嫌になっていった。息苦しくなり、死期が近づいてくるのを感じた。私、このままここで死んじゃうのかな………死ぬ前に子供に会いたいよ。

*************************************


最近読んだ新聞の記事で、収入がないからといって、専業主婦が死亡した場合にお金をもらえる保険をかけていないのはまずいと書かれてあった。幼い子がいる場合、残された夫は残業や出張が出来なくなり収入が激減するばかりか、保育園代などの費用もかかるのでとてもリスキーなのだそうだ。もし私が今死んだら、残された子はどうなるのかと思うとゾッとする。お金や健康についてもっと真剣に考えないと…と思う。

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● COMMENT ●

まるで本当のことのよう

おはようございます。
とてもきれいなブログですね。

これは、夢のお話ですよね? 細部にわたり、とてもリアルで自分がまるで、その場で見聞きしているような気がしてきました。
ハイチョウガンなる言葉もまた、どこか現実的な響きを持っていて、そんな病気もあるのかなぁ、と信じてしまいそうでした。

NoTitle

むぅにぃさん、コメントありがとうございます。ハイ、眠りが浅いのかやけにリアルな夢を見るんです。でも夢なのでものすごく不条理っていう。
むぅにぃさんの夢のお話は臨場感あふれてますね。特に空飛ぶバイクの話が好きです。また感想いれさせていただきますね。


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プロフィール

ハヲルチア

Author:ハヲルチア
40歳で出産、老体にムチを打ちながら小さな息子と格闘中。現在派遣社員で翻訳の仕事をしています。主婦のつまらないひとりごと、奇妙な夢の記録、時々読書感想文、大好きなアートの話など―。

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