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夢ではない話 3 - 2014.09.11 Thu

「それボクのじゃないよぉ~」
聞き覚えのある、子供のようなしゃべり方だった。そして感情というものが全く感じられなかった。彼は私の事、覚えていないだろう…多分。前の会社でその男のことをバカにしていたことを思いだし、私は内心気が気でなかったのだが。
「でも、確かにあなたからこの財布が落ちたのを見ましたよ。どうぞ。」
薄気味悪かったが、拾ってしまった以上持ち主に手渡さないと行けない。私は必死だった。
「それボクのじゃないよぉ~。」
「で、でもあなたが落としたのを…」
同じやり取りを何度か繰り返し、彼はこう言った。
「ボクのじゃいんだもぉーん。変な彼女ぉ。」
私が変人扱いされてしまった。彼が立ち去ろうとしたので、私は苦し紛れに歩道の横にあったポストの上に財布を置いて彼に言った。
「ここにお財布おいておきますからねッ!」

男は無言でニヤニヤ笑うと、背を向けて大阪駅の方面に歩いて行った。私も同じ方向なので何メートルか後を歩いていた。ああ、気持ち悪い、っていうか意味が分からない、何なのよ、もう…と思いながら歩いていると、その男がズボンのポケットをさぐりだした。そして急に振り向いて私を睨みつけた。

「財布がない財布がない財布がない財布がない財布がない。」
「へっ?さっき渡そうとしたら、自分のじゃないって言ったじゃないですか?」
「僕の財布はッ?僕の財布はッ?僕の財布はッ?」
彼は早歩きでツカツカと歩いて来て、私の顔の真ん前に自分の顔を近づけた。目は合っているはずなのに合わない。ごく間近にいるのにコミュニケーションが遮断されている状態だ。

「あなたが受け取らないからさっきあそこにおいたでしょう。」
私は来た道を指さした。
「泥棒ッッ!!僕の財布を返せッッ!!!」
彼は絶叫した。嫌な汗が流れた。危険を察知した。これ以上説明しても無駄であることを咄嗟に判断し、私は逃げることにした。

とにかく走った。ピンヒールをはいていたので足が千切れそうなぐらい痛かったが、そんなことは言ってられない。後ろを振り返る余裕もなかったので、彼がどこまで私を追ったのかはわからない。JR大阪駅前の大きな横断歩道の人混みに紛れこんだ時、もう大丈夫かと思ったが、足がガクガク震えていた。

二週間後ぐらいに、偶然元同僚に梅田の地下街で会った。その不気味な男を職場で見る度に一緒に笑い合っていた女性だ。すかさず私はこの出来事を彼女に話した。彼女は困惑した表情を浮かべ、「えー、そんな人いたっけぇ?」と言った。私はしつこくその男の特徴の説明をしたのに彼女は覚えていない、と言い張った。しらばっくれる理由もないし、忘れるにはインパクトのありすぎるキャラクターだったのだが…。この事も後味が悪かった。

私は夫や友人にこの話しをしたのだが、どれだけ怖い思いをしたかいまひとつ伝わらなかった。やがてこの出来事の記憶は薄れていった。だが、冒頭の事件の犯人の顔をテレビで見た時、昨日のことのようにありありと思い出したのだ。何故ならその男と殺人犯がよく似ていたらからだ。

年齢的にも明らかに違う、別人物であるし、瓜二つというのでもない。ヤバいことをやらかす狂った人間の表情が一緒だったと言えばわかってもらえるだろうか。薬物によるものなのか、生まれながら持っている狂気なのか。そこに悪意はあるのか。その行為に意味はあるのか。不運にも通り魔に遭ってしまった被害者のことを他人ごととは思えない。狂った奴はどこにでもいるし誰でも被害者になり得るという現実に戦慄する。

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プロフィール

ハヲルチア

Author:ハヲルチア
40歳で出産、老体にムチを打ちながら小さな息子と格闘中。現在派遣社員で翻訳の仕事をしています。主婦のつまらないひとりごと、奇妙な夢の記録、時々読書感想文、大好きなアートの話など―。

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