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2015-10

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モンローが死んだ日 - 2015.10.18 Sun

主人公の鏡子は夫に先立たれた後、軽井沢の近くの町で静かに暮らす50代の未亡人である。彼女はある文豪の記念館の管理人として働きながらひっそりと暮らしている。

慎ましくおだやかな生活を送っていたが、精神が不安定になりアイガー北壁から落ちるイメージから逃れられなくなる。地元でたった一人の友人の女性の勧めで精神科に通うことになり、ある医師と出会う。彼に話を聞いてもらい、適切な薬の処方のおかげ鏡子は少しずつ元気を取り戻していった。

横浜からアルバイトとして来ているというその医師が鏡子の勤める記念館に訪れたことから二人の中は急接近する。そして、医師が診察の為訪れる日は彼女の家に滞在こととなった。穏やかな大人の恋愛関係だったのだが、突然医師が約束の日に来ず、連絡が途絶えてしまった。彼は病院も急に辞めていたー。

医師の失踪場面から物語が始まるミステリーの作風で、三島由紀夫の『鏡子の家』のオマージュ作品でもある。精神を病んでいたマリリン・モンローのエピソードも随所にちりばめられており、とにかく濃い内容の小説だった。

恋愛が物語の中心であるが、50代女性の孤独と苦悩が克明に描かれている。彼女は亡くなった夫との穏やかな日々を思い出すことはあるが、彼女を苦しめているのは子供の頃の母との関係だ。以前ブログに書いた『母という病』でも思ったのだが、程度の差こそはあれ、大人になってからも母との確執に悩まされている人は多いのだと思う。鏡子の場合は、〝母の病”の度合いが深刻だ。この辺りは母親が子供に生涯に渡って与える影響の重要さについて深く考えながら読んだ。

失踪した医師の方も深刻だ。ネタバレになるのでこちらについては詳しくは書かないが、明らかになった彼の身の上について読んでいると心が締め付けられる思いがした。

ミステリーとしても恋愛小説としても読み応えがあったーしかし心の病というものについてここまで考えさせられるとは…。しかし小説の最後は希望の光がさしており読後感は悪くない。

余談であるが、失踪した医師への手がかりとなる一人の若い女芸人が小説の後半登場する。この女性が人気のあの女性芸人とかぶってしようがない。小池真理子氏は彼女をモデルにしたのだろうか…。テレビで明るく芸を披露する彼女だが、実は心の奥に深い闇があるのではないかと感じる視聴者は私だけではないと思うのだが。

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リゾートアイランド - 2015.10.12 Mon

私がその夏バカンスに過ごすことになったその場所は、旅行会社によるとまだ日本人が訪れたことのない小さなリゾートアイランドであった。レア度にミーハー心が動かされた私はその島で一夏を過ごすことにしたのだ。

上空から見たその島は緑の森だけでできておりビーチは見当たらない。ヘリコプターのはしごから降りたったその島は思っていたよりずっと小さかった。まず、島の端から端まで見渡せるのだ。島全体が森だと思っていたが、私が踏みしめる土地に木々はない。苔でもなく、草でもない、何か同一の植物でビッシリと覆われている。

歩くたびにその植物をグサグサと踏みつけるのだが、ボロボロと足元から崩れていく。何か見覚えのある植物だ。そうか、ブロッコリーだ。しかし島がブロッコリーで覆われていると言うよりも、この島自体が巨大なブロッコリーでできているように何故か直感で思った。

私は島の端まで歩いて行くのだが、島全体がグラグラと揺れており足元もおぼつかない。どうやらスーパーマーケットで売られているブロッコリーの形のまま巨大なサイズの島が海にポッカリ浮いているのではないかと推測される。

捕まるところもないし、足元も不安定なので今にも海原に放り出されそうであるが、なんとか島の端に立つことができた。そこから海を覗き込むと、島の周りの水深はかなり深そうであったが、驚異的な透明度である。

水面を通して見られたのは、鯉のようなどうみても淡水魚のような魚の群れが見えた。独特の生態系を持つエリアなのであろうか。目を凝らすと、深海に生息するキリガイという鋭角の鋭い形状を持つ貝が底の辺りで泳いでいるのが確認できた。

貴重な、実に非常に貴重な体験である。しかし、宿はどうなっているなか?食事はいったいどうすればいいのか?不安が渦巻きどこにも答えはないが、不思議と私に焦りはない。

場所は一変して、通学の電車の中である。私立のお嬢様学校に通う私は、前に座った学友にふいに尋ねられた。

「ハヲルチアさんは、この夏のバカンスはリゾートアイランドだったそうだけど、どちらでしたの?」

あのブロッコリー島をどう説明したら良いのかわからない私は、とっさに答えてしまった。

「プリンス・エドワード島でしたのよ。カナダのね。」

学友は大げさに手を口にやり小さく感嘆の声をあげた。

「あら、ハヲルチアさん素敵ね。名前は存じ上げますけど、どんな島ですの?是非お聞かせいただきたいわ。」

私はプリンス・エドワード島が「赤毛のアン」の舞台であったこと以外に何の知識も持ち合わせていない。むろん訪れたこともない。焦った私は、友人から聞きかじったことのあるカナダの観光地である島の話をさも自分が行った場所のように説明した。

「ハヲルチアさん、それは、ヴィクトリア島じゃなくって?オホホ。」

無理をしてお嬢様学校に通っている私の家庭状況を彼女は知っていたのだと思う。彼女の言い方は私が見栄を張って嘘をついているのだということを見透かしているようであった。

プリンス・エドワード島には行っていない。お金のかかる高いところは無理だ。しかし謎のブロッコリー島には確かに行ったということを私は彼女に説明したかった。

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プロフィール

ハヲルチア

Author:ハヲルチア
40歳で出産、老体にムチを打ちながら小さな息子と格闘中。現在派遣社員で翻訳の仕事をしています。主婦のつまらないひとりごと、奇妙な夢の記録、時々読書感想文、大好きなアートの話など―。

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