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2014-12

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井戸の底から - 2014.12.26 Fri

井戸の奥に私は潜んでいる。落っこちたとか、誰かに突き落とされたという訳ではないらしい。穏やかな気持ちで、底から、暗闇から丸く切り取られたような青空を見上げている。    
マンテーニャの絵みたいだなと思った。天井に描かれた、だまし絵のような絵画で、丸い天窓から天使たちが階下をのぞき込んでみているやつだ。

突然、井戸のふちからこちらをのぞき込んだのは天使ではなかった。可愛い瞳をしたオレンジ色の蛇がチロチロと細い舌を出しながら顔を底に向けていた。

直感で、毒蛇ではないことがわかった。蛇は長い体をゆっくりくねらせて降りてきた。私のそばに来たいののだろうか。好意的であることだけはわかった。

つぶらな黒い瞳はとても可愛かった。手が届くところまで来ると、そっと頭をなでてやった。ひんやりとした蛇のさわり心地はうっとりするぐらい気持ちがよかった。上等のハンドバッグのさわり心地かそれ以上だ。蛇もまんざらてもなさそうだ。

それなのに、それなのに私は蛇の尻尾をむんずと掴み、思いっきり井戸の外へとぶんなげたのだ――。

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虐待の芽 - 2014.12.22 Mon


面接とチャーハン - 2014.12.21 Sun

中堅の食品会社で正社員の応募があった。新卒・中途は不問であったので応募者が殺到することは簡単に予想された。

ダメ元で私は履歴書を送ってみた。しかし、驚いたことに書類審査を合格し、本社での集団面接の案内通知が手元に届いた。

私は四十を過ぎていること、幼い子供がいることを書類に明記していた。これらのマイナスポイントを考慮しても書類が通るということは、何か私にはあるのかもしれない。もしかして――これはいけるかも。

妙に自信をつけた私はしばらく行っていなかった美容院へ足を運び、サッパリと仕事の出来る女風のシヨートボブにしてもらった。当日はパリッとしたスーツに真っ白なシャツを身につけ、適度な高さのハイヒールを履き颯爽と家を後にした。

ところが食品会社に向かう途中、猛烈にお腹が空いた。また、久々にはくヒールで足は弱りきっていた。

「腹が減っては戦ができぬぅ~…。」

通りすがりのコンビニに入り、食べ物を物色したがオニギリやサンドイッチなどのすぐに食べられるものが売り切れていた。空腹で判断力が鈍っていたのか、なぜか冷凍のチャーハンを購入した。面接の時間は刻一刻と迫っている。

「げげっ、もうこんな時間!チャーハン食べられへんやんか…!」
チャーハンは到着する頃には自然解凍されて食べ頃になっているだろうか。私は目的地に向かった。

本社で受付をすませ、大きな会議室に通された。五十代の女性社長とその両端に数人の中年男性の役員が並んで座っていた。その前にたくさんの机が配置されており、面接者が向き合って座れるようになっていた。

「お好きな席におかけ下さい。」
進行役の女性社員が言った。私は迷わず一番前の、しかもど真ん中の女性社長の目の前の席を選んだ。今日は勝ちに来たのだから。後ろを振り返ると五十人ほどの求職者がいる。中年もいるが、ほとんどが来年卒業の大学生に見えた。

「これから集団面接を行います。とはいっても弊社は普通の面接は行いません。みなさんはこれからご自分の席でお好きに過ごして下さい。質疑応答は一切いたしません。」

進行役女性の言葉に会場はどよめいたが、「それでははじめっ」と言ったので静まり返った。重役たちは私たちをまじまじと観察している。

私が視線をあげると、目の前の女性社長と目が合った。綺麗にセットされたヘアスタイルにローズピンクの口紅がよく似合っている。シャネルのツイードジャケットも素敵だった。彼女がにっこり微笑んだので私も微笑み返した。

周りを見渡すと、皆一様に、背筋をピンと伸ばしたまま緊張した面持ちで固まっていた。観察されているのだから、何かアピールしないとね…。

バッグをのぞき込むと日経新聞と冷凍チャーハンが出てきた。私は新聞を広げ、食品業界について書かれているところを熱心に読むふりをした。時々赤鉛筆で記を入れたりして。

いい感じかもしれん…と思ったらお腹がグーッと大きな音を立てた。恥ずかしさでいっぱいだがここでチャーハンを食べるわけにもいかないしな…。でもいい感じに解凍されてるし…。チャーハンの袋をいじり倒していると突如、進行役がパンッと手を叩いた。

「ハイ、ここまでで結構です。皆様、本日はお疲れさまでした。お気をつけてお帰りください。」

面接で何も発揮できていないのでモヤモヤしながら、帰っているとチャーハンを机に置いてきたことを忘れた。取りに行くべきか…。あんなものを持ち歩いてると思われているのも恥ずかしいが、忘れ物を取りに行かないで、だらしない人間だとも思われたくない。

食品会社に戻り、勇気を振り絞り会議室に入っていった。女性社長が私にチャーハンを手渡してくれたのだが、穴を掘ってでも入って隠れたい気分だった。しかし彼女はにこやかにこう言った。

「このチャーハン、うちの新商品じゃないの!うれしいわ。あなた研究熱心ね!」

運が向いてきたかもしれない。

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死呪の島を読んだ - 2014.12.18 Thu

今年の日本ホラー小説大賞受賞作である。最近は同賞から「黒い家」や「ぼっけえきょうてえ」のような強烈なパンチの効いたホラー作品が生まれていない。なので、ここ十年ほどはこのジャンルの小説はほとんどノーチェックだった。

たまたま日経新聞のブックレビューを読んでいたらこの作品が紹介されており、賞賛されていたのでこれは一読の価値がありそうだと思い、早速図書館に予約を入れて順番を待った。

待ち遠しかったこともあり、家事と育児の合間をぬって夢中で読み進めた。中々のエンターテイメント先品だったのだ。内容は幾多ものおぞましい死に彩られているし、離島の忌まわしい歴史や古い因習が絡んでくるのでシリアスで読み応えがある。その一方、主人公が普通の男子高校生であり、島を次々と襲う災いを通して成長する中で淡い恋の話もあるので、ライトノベルの要素もあった。

難点をあげると、これは後書きでホラー大賞の選考委員の作家たちも言っていることだが、エピソードを盛りすぎなのだ。この小説に出てくるエピソードを分けて掘り下げたら三本分ぐらいの小説になるのに。そうした方が恐怖度も増したのではないかと素人ながらに思った。

作者である雪富千晶紀氏を検索してもあまり情報が得られないので、本作がデビュー作なのだろう。このようなボリュームの作品を書き上げる力量があり、引き出しも沢山持っていそうなのでこれからどんどん面白い作品を発表するのだろう。

またこの小説を読んで思ったのは、私の個人的な感想なのだが、呪いをかける人間で一番恐ろしいのは、母親なのではないかということだ。子を産む経験をすると、今までとは違った感情が芽生えるようになる。それは子を慈しむ優しい感情が主であるのだが、同時に子を守る本能がそうさせるのか、強い敵対心も芽生える。たとえ幸せに満ちていたとしても、だ。

禍々しい災いの核となる呪いの発端は、ある母親の深い悲しみと怒りから来ている。私が彼女と同じような経験をしたら…気がふれてしまうか、呪術に頼るかもしれないなと思った。

死呪の島死呪の島
(2014/10/30)
雪富 千晶紀

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可愛くない新人 - 2014.12.11 Thu

私は某大手メーカーの大阪本社で、派遣社員として働いている。正社員の仕事との境目はなく、毎日夜8時か9時まで残業しており非常に忙しい。

今年もこのフロアに新入社員の配属がなく、事務職をしている女性は三十代以上のベテランぞろいだ。たまに補充される派遣社員も即戦力を求められる為、私のようなアラフォーの経験者が多い。

そんな中、新しく派遣社員が配属された。久々の20代女子であったので男性社員は色めき立っていた。

しかし何故、彼女のような子が派遣社員として採用されたのか理解できなかった。派遣社員だったら仕事が出来て当たり前なのに、それ以前に彼女は社会人としての基礎が出来ていなかったのだ。しかも周りの女子社員が注意するとふてくされ、中々言うことを聞かない。挙げ句の果てには周りの男性社員に「ワタシ、おばさんたちにいじめられるんですぅ~」などとのたまう始末だった。仕事の鬼であるお局様も彼女にはほとほと困り果てていた。

彼女は若いので肌はピチピチで露出度の高い服もよく似合っていたが、はっきり言ってブスだった。ブスのくせに「おばさんたちが私に嫉妬するんですぅ~」と言っているのを聞くと、この人は鏡を見たことあるんかいなと思った。なぜならフロアの女性陣は年はくっているがお局様を筆頭に美人ぞろいだったからだ。それでも男ってヤツは年増の美女より若いブスが可愛いのかチヤホヤするので、ますます彼女は調子に乗っていった。

ランチの時に先輩が「もし私があの子と同い年だったら絶対絶対に私の方が上!」と言っていたが、フロアの女性全員が同じことを思っていたはずである。

ある日彼女の机の前を通りかかると私は呆れかえった。だらしなく座り頬杖をつきなら、靴を脱いだ足を放り出し、耳には音楽プレイヤーからのイヤーホンが刺さっている。そんな格好で客先から電話で受注の確認をしているのだが、話し方がまたひどい。「品番はxxxxでぇ、100本でしたっけぇ?あ、1000本でしたね~。納期?まにあうと思いますぅ~多分。」このままだと工場への発注内容を間違えるか、不安に思った客先が注文をキャンセルするなどして部署に損害を与えるのではないか。いずれにせよロクなことにならないだろう。

私は業務上彼女と接点がないので、注意をしたことがなかったのだが、この時は何故か見過ごすことができなかった。彼女が受話器を置くと私は自分でも信じられない行動に出た――顔を彼女の真ん前に近づけてこう言い放ったのだ。

「あんたみたいな人間のこと、何て言うか教えてやろうか?給料泥棒って言うんだよ。」

慌てたお局様が近寄ってきて「ハヲルチア、言い過ぎやでっ!」と言った。他の女性社員たちは満足げに見ている。

「おお怖っ!」
「ハヲルチアって元ヤンじゃなかったっけ?」
「昔レディースで特攻服来てバイク乗ってたらしいで。」
男性社員たちは面白そうに根も葉もないことを言っていた。私も我に返り、彼女が泣き出すかもしれないと思った。誰かが悪者になってガツンと言ってやらないと彼女のためにもならないと思ったのだが…。

「えーっ、何それ、意味わかんなぁい~。」
驚いたことに彼女は泣くどころか私を馬鹿にしたようにニヤニヤ笑いながらこう言った。

「ここの女の人でぇ、私に怒んないのハヲルチアさんだけだったのにぃ~。ハヲちんも他のおばさんと一緒だねっ!!」

その時、突然緊急時のサイレンがビル中に響きわたった。避難訓練があるなんて聞いていない。誤作動かと言い合っていると、一斉に皆の携帯電話が鳴り始めた。
「本物や!」
「地震がくるよっ!」
私たちは全社員に支給されているヘルメットをかぶり机の下にもぐった。それなのに彼女は綺麗な足を見せびらかすように組んで椅子に座り、ニヤニヤ笑っている。

「もう~、みなさん大げさなんですよぅ~。だいじょうぶですってぇ~。」
「バカッ!!あんたも早くヘルメット被れッ!!」
私は無理矢理彼女の頭にヘルメットを押し込んで自分の机の下に引っ張り込んだ。その直後フロアは嵐の中の船のように大きく揺れ始めた。

「ハヲちんはあたしの事心配してくれてたんだね…」
机の下で身を寄せ合っていると、彼女の表情からニヤニヤが消えていた。間近で見ると童顔で素直そうな顔をしていた。根気よく指導すればきっとまともな社会人になるだろう。無事に私たちが生き残ることが出来ればの話だが。

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鮭ご飯に込められた憎悪 - 2014.12.10 Wed

その日は息子の機嫌が悪く一日中グダグダで自分の食事を摂る暇もなかった。やっと遅い昼寝をしてくれたので、何かを食べようと思ったが炊飯ジャーにはごはんがお茶碗半分ぐらいと鮭が一切れあるだけだった。これだけではお腹が空くので、おからをご飯に混ぜ込んだ。鮭は焼いてほぐしたものをご飯にかけた。

さあ食べようとした時、太った警察官が勝手に我が家に入り込んできた。丸顔で艶々した顔はまだ赤ん坊の息子に似ている…と思ったらもう二十年以上会っていない遠い親戚の男性だった。

「ハヲルチア、久しぶりぃ。わいな、めっちゃ腹減っとるんや!これもらうで。」そう言うと、彼は私の鮭ご飯を食べようとした。
 
育児と授乳で疲れて倒れそうなぐらい空腹の私からたった一杯のご飯を取り上げるとは許せん!そう言えばこいつは子供の頃から、悪さをしたり自分より小さい子をいじめても周りの大人からお咎めがなかったとを思い出した。激高した私は彼からお茶碗を引ったくりその場で一気食いをしてやった。

彼は驚いて目が点になっていた。「おまえ、昔は大人しい子オやったのにそんな鬼ババアみたいになってしもうてからに…。」私は思っていたことをぶちまけた。玄関の鍵が開いているのをいいことに上がり込んできたり、男尊女卑のなごりで男の子の方が大事にされたりする田舎の風習が昔から死ぬほど嫌いだったことを一気にまくしたてた。しかもアホのくせに警察官になってますます偉そうにしくさってからに、と言ってやったが、彼にはぴんとこないようだった。一生わかってもらえないのだろうなと思った。

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竜舌蘭 - 2014.12.09 Tue

私は独身で恋人もおらず、もうすぐ40歳になろうとしていた。仕事漬けの毎日とはいえ、勤め先はブラック企業で対した収入があるわけでもない。

そんな私は、得体の知れないマダムの家に居候している。彼女は大阪市内の一等地にある古い高級マンションの最上階ワンフロアを所有しており、私は彼女の好意で格安の家賃と光熱費で住まわせてもらっている。

「あんたさ、この歳で大した仕事もしないでさ、オトコもいなくってさ、どーすんのさ!美人でもないしね、お先真っ暗だね!」

顔をあわす度に嫌みの嵐である。だが私もなかなかの憎まれ口で応戦し、楽しくやっている。

バブル期に買ったマンションのインテリアは金はかかっているが、今の時代にはそぐわず、豪華であるが古くさかった。ある日マダムは私に言った。

「あんた、センスだけは悪くないから今風のインテリアに変えとくれよ。お金は出すからさ。」

某外資系のクレジット会社のブラックカードを手渡された。私はイタリア製の高級家具やら、高名なデザイナー家具を見て回った。憧れてはいるが一生自分とは縁のないと思っていたような物なので、自由に買ってよいと言われても怖じ気づいて、とてもじゃないが選べなかった。

今ある家具は古くさくても良いものばかりなので、それらはそのままにし、カーテンや小物でマイナーチェンジしようと思った。せっかく金を出してやろうっていうのに、貧乏くさい子だねぇ、と言うマダムの言葉が頭に浮かんだ。そう言われた場合には、余った金は老後の資金にでもしやがれと言ってやろうと思った。

ばあさんにはわからないような人気の北欧テイストのインテリアの店に行った。シンプルですてきな物がそろっている。

ふと、観葉植物のコーナーに目がいった。私は多肉植物が好きなので何個か買おうと思った。見てみると大きな洒落た鉢に立派なアガベが植えられた物があった。広いリビングにこういうのを置くのが夢だったのよねぇ…。そう思いながら値札を見ると、なんと25万円もした。んな、アホな。いくら高価でも一桁違うのではないか。私が首を傾げていると、気取った感じの店員がササーッと近寄ってきた。

「こちら、最近海外のインテリア雑誌でも取り上げられている話題のモノなんですよ!」

その大きなアガベを見ると、多肉植物特有の太い葉が中心部から放射状にたくさん生えているのだが、その一つの葉が異様だった。20代半ばの裸の青年が生えているのだ。

「うわああっ!!なんじゃこれは!」
「独身のキャリアウーマンに大変人気なんですよ。この男の子の葉がお仕事で疲れた女性を癒してくれるんですよ。」

店員の目は、あなたのような寂しい女性をね、とでもいいたげだった。葉っぱの青年は美形だったが、顔色が悪く媚びだ表情でこちらをじっと見つめ、とても気色悪かった。神話のナルキッソスを思い出したが、それよりも男娼という言葉がピッタリくるような顔立ちだった。

こんなキモいもんいるか、ボケ!と吐き捨ててその場を離れたかったが、何故か体が金縛りにあったかのように動かなかった。葉っぱの青年は鉢から身を乗り出し手を私の方へ伸ばし、細く柔らかい指を私の足に絡ませてきた。嫌だったが、どうしても拒めなかった。

「オホホホ。この子ったらお客様のことが好きみたいですよ。」
その店員と葉っぱの青年に欲求不満で寂しい中年女だと馬鹿にされているようで、私はとても腹立たしかった。

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目が覚めて、どこかで見たことのある顔だと思ったらカラバッジオの描く少年に似ていた。こんなに体格は良くなくて不健康な感じだったけれど。

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カラヴァッジオ バッカス

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バットマンのおじさん - 2014.12.06 Sat

息子が車に興味を持ち始め、スーパーカーに乗りたがるようになった。パパのおくるまじゃだめなの?と聞くとムーッとふくれっ面をする。残念ながらうちの車はごくごく普通のコンパクトミニバンなのだ。

困り果てた私は国道沿いの歩道に息子を連れて立ち、スーパーカーをヒッチハイクすることにした。すると早速、やたら車体の低い真っ黒なスポーツカーが私たちの前で停まった。マツダのマークが付いていたが見たことがない車種だ。海外向けのものなのか、改造車なのか、私が知らないだけなのかわからないが、とにかく近未来的なデザインの車だった。

ドライバーの顔は影で目元がはっきりと見えなかったが、顎がパカッとわれており髭の剃り後が青々した外人風の、しかしあきらかに日本人の中年男性だった。

特にやりとりもなく私たち親子は自然に車に乗り込んだ。アゴおじさんも無言で車をスーッと発車させた。それと同時に屋根が開いてオープンカーになった。幼い子が身を乗り出すと危険なので、思わず息子をギュッと抱き寄せた。それに気付いたのか、ドライバーは何かスイッチを入れ、窓枠からウレタンのような柔らかい素材で出来た灰色の囲いがウィーンという音と共に現れた。

感心してミラーに映るドライバーの顔をのぞき込むと、顔の上半分はマスクで覆われていた。シートからは黒光りのするマントがはみ出していた。

「もしかして、あなたはチバットマンさんですか?」
ここは千葉から遠く離れた大阪であるが、バットマンのコスプレをして車を走らせている人は他にあまりいないだろうと思い、そう尋ねてみた。

「そうかもしれないし、そうではないかもしれない。目に見えるものが常に真実とは限らないのだ。」

渋い声でドライバーは言った。何だか哲学的な話だなと思った。小難しい話はよくわからない。ただ、バットマンは実在しないけれど、バットマンを真似たおじさんは目の前にいる。とりあえずは今のこの状況を楽しんでみるか。国道から見える、チェーンのファミリーレストランや車のディーラーが並ぶ平凡な風景もゴッサムシティのように思えてきた。

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プロフィール

ハヲルチア

Author:ハヲルチア
40歳で出産、老体にムチを打ちながら小さな息子と格闘中。現在派遣社員で翻訳の仕事をしています。主婦のつまらないひとりごと、奇妙な夢の記録、時々読書感想文、大好きなアートの話など―。

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